これは、日本の企業ではよくあるお話です。
チームのために!と、メンバーが自分の守備範囲を超えてまで組織に貢献しようとすることはすばらしいことです。自己犠牲の精神とも近いかと思います。そんなメンバーが多くいる組織はきっと強い組織なのでしょう。
そんな強いチームを作る方法論のひとつがいわゆるマネジメントなのだと思っています。
一方で、企業で働く身として、しっくり来ていないコトがあります。
それは、上手くマネジメントが機能していない組織の中で「チームのため!」と自ら責任感を燃やして歯を食いしばって頑張ることが、本当にチームにとって良いことなのだろうか?という問題です。
立場によっても違うと思います。その人がチームリーダーなのか、メンバーの一人なのか。もちろんリーダーと言っても細かな立場の違いもあるし、メンバーと言ってもベテランなのか新参者なのか、スキルがあるのか等の詳細条件によっても変わることでしょう。
■チームのためにならない
目的は、あくまでチームとして成果をあげることです。チームとして成長し続けることです。これらを中長期で持続することです。
結論を先に言うと、これらの目的において、それが事業である場合には、誰かが率先して守備範囲を超えて頑張ることは、組織にとって良くない側面のほうが多いと思っています。うまくマネジメントできていないチームの場合は。もちろん、良い面もあるとは承知していますが。
一方、チームではなく、頑張る本人にとってはプラスが多いです。それは、個人での目的・目標においての話です。中長期でチームのためになるのか?とは違った領域でプラスがあるということです。失敗から学ぶ。自分のキャパを知る。自分を鍛える。守備範囲が広がる等捉え方によってプラスは多いと思います。
■直面するフェーズによって違う
この解釈は、チームが黎明期にいるのか成熟期なのかによっても違うと思います。
何も整っていない粗削りな黎明期であれば、理屈よりも情熱と柔軟性を駆使して「なんとかする」ことが求められますので。大変な局面になればなるほど、自己完結型の人材に仕事がどうしても集中します。このフェーズでは避けられないことです。
黎明期では、実践できさえすれば状況は高い確率で改善されます。前進しさえすれば良くなるものです。
一方、成熟期にある時は、ひととおり効率的に、ある程度快適に環境がそろっていて、一定の安定を保っている状態です。
このフェーズでは、頑張って動くことで、結果としてむしろ前より悪化することも起こります。悪化していることに気づかず、ゆでガエル状態になることも珍しくありません。きっと、思い当たる節がある人も多いことでしょう。
以上の論点を、次にまとめてみました。
【特定の誰かが無理して頑張ること】良くない面
・チームの課題が個人の頑張りによって隠れてしまう。気づきにくい。共有されない。つまり、改善されない。この状況ではチームは時間と共にゆっくり衰退する。
・その人以外のメンバーと士気やスキルが共有されにくい。
・その人に依存するのでチームが不安定。
・個人の働きなので、継続することが難しい。質にバラツキがでる。
・その人が頑張ればそれだけ、抜けた時の穴が大きくなる。
良い面
・どうしても乗り越えなければならない有事の下では、個人の頑張りが有効である。
・インフラが整備されていない環境下では、理屈よりも成果を求められるので効果がある。
どっちもありで、どっちが良いとは言いきれないと思います。人が関わる問題である以上はケースバイケース。
あえて定義づけるなら、黎明期なのか、成熟期なのか、衰退期なのか。あるいは、有事なのか平時なのかによって切り替えることができる体制を整えておくことがベターだと思います。
■切り替えられる体制
平時は全員に業務をできるだけ均等に誰かに偏らないような体制を組む。それにより課題をあぶり出してPDCAを回しチーム力を改善させる。一方で、緊急時にはできる人にある程度頼り、あらゆる領域で目いっぱい頑張ってもらう。
このようにフェーズとシーン次第でスムーズに切り替えをすることが効果的だと思っています。この切り替えは、トップにリーダーシップを発揮して頂く必要があるのでしょうね。
その前提として、日頃から社内コミュニケーションをとり、信頼関係を育んでおくことも大切な要素となってくると思います。この話は長くなるのでまたの機会にしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。